ビックフット


ビックフットは

夜の空

ひとり星座を編んでいる

寂しい子どもをみつけると

星の毛布を投げるだろう

毛布をもらった子どもは

空の旅

両手に

笑いを溢れさせ

宙返り

ビックフットは

森の中

ひとり神話を書いている

迷った大人をみつけると

星の毛布を投げるだろう

毛布をもらった大人は

森の旅

両手に

涙溢れさせ

宙返り


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ビックフットは

見えません

大きすぎて

見えません

呼んでいるの

ビックフット

呼んでいるの

ビックフット

必ず答えてくれる

ビックフット

どこにいたって

星の毛布が届くから






深い山の奥に
小さな竜が
眠っていた
山の霧に包まれて
スヤスヤと
眠っていた
太陽が土を温めると
霧はさらに濃く
ゆらゆらと
木々の間を漂って
眠った竜を通り過ぎ
高い空へ昇っていった




薄眼を開けて
空を見上げた小さい竜は
山をいくつもまたぐほど
大きな白い
竜を見た
なんて大きくて強そうな竜なんだ
見とれる間もなく
大きな竜は尾を翻し
風の速さで
山の向こうへ
飛んでいった




僕もあんな風になりたいな
そう言って
小さい竜は跳ね起きて
ねぐらの穴を飛び出した
追いかける声には耳を貸さず
できる限りの速さで走った
山の頂まで来ると叫んだ




「空の竜
みてください
僕はこんなに早く走れます
あなたと一緒に連れて行ってください
あなたのように大きくなりたいのです
きっと役に立つでしょう」




その声が聞こえたのか
聞こえなかったか
大きな竜は再び
近くの空へ現れた




「来たければ
私の背中に乗りなさいい」
そう言って大きな竜は
空を降りてきた




小さい竜は
目を輝かせ
一目散に大きい竜に飛び乗った




小さい竜を背中に乗せて
大きい竜は広い空に
上がって
上がって
上がって
あっという間に
山は遠く小さな点になった




小さい竜は
あたりの空が
濃い青に変わったことに
気づき
少し怖くなってきた
大きい竜の背中を掴む手に
力が入る

大きい竜は
おかまいなしに
どんどん高く
どんどん早く
自在に駆け回った

もう
山などはるか彼方に消えていた
代わりに
たくさんの星が
あたりを埋め尽くしていた
飛び交う星をすり抜け進む

大きい竜は
見事な飛行術

小さい竜は
背中につかまり
胸がドキドキしながらも
嬉しくて
嬉しくて
いつまでも
この旅が終わらないことを
願っていた

大きい竜は
ひときわ明るい星を過ぎると
ふわりと雲に覆われた青い星に向けて
飛び込んでいった

「うわーぶつかる」
小さい竜は大きい竜の背中につかまり
目を閉じた
気がつくと
小さい竜は
深い山
見慣れた景色の地面にいた
そっとあたりを見ると
柔らかな朝の霧が
体を包んでいた

空には
山をいくつもまたぐほど
大きく白い筋雲ひとつ
眠そうに
浮かんでいた