精霊の声


私は
一歩づつ
一歩づつ
生きているのか

一歩づつ
一歩づつ
死んでいるのか

私は
一歩づつ
一歩づつ
ざぶざぶと波を抱え
さらさらと流れを渡り
ざーざーと雨に濡れ
しんしんと雪をまとい
はらはらと散る花になり

一歩づつ
一歩づつ

大切なひとが死ぬ時を
恐れないために
全身の耳を澄まして
精霊の声を聞いている

一歩づつ
一歩づつ
精霊に混ざり合えるよう
祈り

一歩づつ
一歩づつ
新しいあなたに
会いに行くのだろう







目を開けると
いつも
世界が置いてある

鳩が運ぶ
小枝のように
世界が置いてある

しおれたヒナゲシ
戦争と
パン

私の中に
知らない世界が
置いてある

それは外の事なのか
内の事なのか

戦っているのは
世界なのか
私なのか

私の中に
風が吹き過ぎていく
兵士が書いた
砂の手紙を
最後に読んだ
風が

悲しんでいるのは
世界なのか
私なのか

起きていることは
世界なのか
私なのか

繰り返される出来事を
見ているのは
世界なのか
私なのか

人が去り
雨が泣く地面を踏み
実ったリンゴの木を
抱くために
私は
出かけよう


外の事だろうと
内の事だろうと

繰り返しの輪の外へ
世界を連れて
私は出かけよう

錆びた長い
フェンスのように
抵抗する自分の外へ
辿り着いたら

闇が光に溶ける空の中から
鳩を捕まえ
手紙を託そう

どんな時も
人の心から
愛が消えた事は
なかったと

記した手紙を
結わえて
鳩を飛ばそう